ヨーロッパ最大級 メディアアートの祭典「STRP 2015」 リアルとバーチャルを媒介するスクリーンの未来とは

2015.03.19 20:00

オランダで二年に一度開催されるヨーロッパ最大級のメディアアート・フェスティバル「STRP」が3月20〜29日に開催される。ロボティクス、音楽、ビジュアル、インタラクティブ・アートなどテクノロジーとアートを軸に世界各国から選りすぐりの作品が一堂に会する。日本からはライゾマティクスの真鍋大度、石橋素両氏が参加。今年のテーマ「SCREEN ON|NO SCREEN」にはデバイス(=スクリーン)が多様化し変容しながらも着実に私たちの生活に浸透している現況と未来を見つめ直す意味合いが込められている。

■アート×テクノロジー世界最大級のイベント「STRP」とは

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STRP Festival 2015 HPトップページより(http://strp.nl/en/


「STRP」は二年に一度、オランダ・アイントホーフェンで開催されるヨーロッパ最大級のメディアアートの祭典で、今年は3月20日より29日まで行われる。第7回目となる今回は25,000人の来場者を見込んでいる。会期中にはライブ、パフォーマンス、カンファレンス、ワークショップ、展示など多彩なプログラムが組まれており、体験を通じて、メディアアートに触れることができる。


このイベントが開催されるアイントホーフェンのブレインポートという地域は近年ヨーロッパにおいて著名なハイテク地域として注目されている。オープンイノベーション、シェアリング・ナレッジが広く浸透しており、ハイテクノロジーとデザインがトップクオリティの製造と起業家精神によりアクセラレートされるようになっている。アメリカ・シリコンバレー、インド・バンガロールに近いイメージだろうか。


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Brainportの街並み(出典:http://mimoa.eu/


STRPは最新のテクノロジーから派生する文化的イノベーションを探求し、テクノロジー・ビジネスと教育機関を積極的に巻き込んでいくことをミッションに掲げている。単なる工業環境から21世紀型の都市生活ラボへと変貌するために、ホーム基地としてStriijp-S(アイントホーフェンのクリエイティブ&カルチャーセンター)と共に発展を目指してきたという。ここは67エーカー、40個分のフットボール競技場相当に及び、国際的に最大と認められるオランダの都市再開発エリアであり、世界で最小のスマート都市であるブレインポートの中心に位置する。


■2015年のテーマ「SCREEN ON|NO SCREEN」に込められた意図

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Joanie Lemercier & James Ginzburg - BLPRNThttp://strp.nl/en/


今年STRPがフォーカスを当てるテーマは偏在する「スクリーン」(画面)だ。テレビからインターネットへとメディアが変容するにつれ、それを媒介し視聴するためのデバイスも多様化しつつ私たちの生活に浸透している。一度街を歩けば、そこら中にデジタルサイネージの広告や電車内ではパネル型スクリーンに広告が流れている。車内で新聞や本を読む人はますます減り、それに代わってスマートフォンを人々が見つめている光景が日常化しつつある。
このように私たちの生活を全方位で取り巻くスクリーン。STRPでは来場者にそのリアルとバーチャルの境界を探索することを期待している。


数あるテクノロジーの中でもなぜ「スクリーン」を選んだのか。STRPは歴史的なコンテクストを紐解きながらその理由を説明する。プラトンの洞窟からルネッサンス期の遠近画法、写真の発明から映画・テレビまで画像/映像などのスクリーン技術の発達は比較的にゆったりとしたペースで進行してきた。しかし、21世紀を迎え世界が一気にデジタル社会化してから様相が変わった。スクリーンはますますその数を増やしながら、巨大化/小型化の両方向で姿を変えながら、よりスマートに、よりインタラクティブに、それでいてより薄く、シャープにフレキシブルに変化しつつある。投影法にイノベーションが起こり、最近ではほぼ全てのものがすべからくスクリーンに反映される。


STRPが行われる会場はまさしく1951年にオランダで初めてテレビ実験が行われた場所であり、アイントホーフェンにテレビセットがまだ40台しかなかった当時に初めて放送が行われた場所でもあるという。さらに、何十年にもわたりブラウン管を作っていた工場施設があった場所でもある。


■スクリーンの外側と内側は果たして現実/バーチャルを意味するのか

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Robert Henke - Destructive Observation Fieldhttp://strp.nl/en/


4Kをはじめ、動画はよりきめ細かくなり、肉眼では物理的な現実と画像を区別できないほどだ。ホログラフィー、VR、プロジェクションマッピングのおかげでパラレルワールドが創造されつつあるといっても過言ではなくなりつつある。STRPが問うのは、このようなテクノロジー環境の変化の中で、私たちはいかに行動すべきかということだ。それはリアルなのかバーチャルなのか。私たちはそのイメージの中に踏み込んでいるべきなのか、それとも外側にとどまっているべきなのか。その境界を超えたとき、感情はどうなってしまうのか。
(この点に関し小室氏がインタビュー「小室哲哉がつぶやく「音楽とテクノロジー」の新時代」でも語っている)


STRPのディレクターでありアーティスティック・マネージャーのAngelique Spaninksが提起するのは、物質/非物質的イメージの薄いラインの境界と、スクリーンとその先にあるものの間を探索することだ。彼女が来場者に見せたいのは、私たちの周りを行き交うイメージと我々との関係性が一層複雑なものとなりつつあること。私たちは時にそれらの中に没入してしまうと同時に、そういったイメージをよりよくコントロールできるようにもなっている。こういったアンビバレンスをいかに捉えることができるのか。

彼女はさらにこう言う。「最近どこでもスクリーンを目にするのに、私たちのほとんどは、それをいかに使うのか、私たちの文化にどんな意味を持つのかを考えようとしない。『私たちがツールを磨く一方で、ツールも私たちを磨く』という言葉はテクノロジーへの恐怖心が増すにつれ、よく聞くようになったものだ。今回はそこについて少し突っ込んで探検してみたい」(STRPの公式サイト上コメントより)


テクノロジーへの関心が強い人に限ってドローンやオキュラスリフトのようなある意味分かりやすいテクノロジーに目がいってしまいがちだ。日常的に触れるスマートフォンやテレビなどは、テクノロジーというよりは所与の生活必需品としてみている向きがある。STRPの今年のテーマ「スクリーン」は一見シンプルで拍子抜けしそうなものだが、実は人間の"見たい"という欲求へと迫るテクノロジーの本質を問う深遠なテーマなのだ。


イベントに参加した真鍋氏に今年の模様や雰囲気、特に目を引かれた展示作品、さらに今後の展望を伺った追記事はこちら:メディアアートのど真ん中「STRP 2015」を真鍋大度はこう見た


取材・文:長谷川リョー

1990年生まれ。フリーライター。これまで『週刊プレイボーイ』『GQ JAPAN』WEBなどで執筆。「BOSCA」編集長。東京大学大学院学際情報学府在籍。@_ryh

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